共に名作として知られる『天空の城ラピュタ』と『ふしぎの海のナディア』。まさか源流が同じ企画だったとは !
宮崎駿監督による冒険活劇の傑作『天空の城ラピュタ』が、8月30日午後9時から日テレ系の「金曜ロードショー」で放映。実はこの映画と兄弟ともいえる、TVアニメの存在をご存じでしょうか ?
庵野監督の出世作『ふしぎの海のナディア』とは?
それが「ラピュタ」の上映4年後に当たる1990年から91年にかけて、NHK総合で放送された庵野秀明監督の出世作『ふしぎの海のナディア』です。ジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万海里』などをモチーフに、19世紀を舞台に発明好きの少年・ジャンと謎の少女・ナディアとの出会いを描いた作品。1995年に『新世紀エヴァンゲリオン』が社会現象になる前からアニメファンの間で庵野監督が広く知名度を得るきっかけとなりました。『天空の城ラピュタ』で少女シータが「飛行石」を持っているのに対して、ナディアは「ブルーウォーター」を持っています。いずれも不思議な力を持つ青い石をペンダントにしている上、この2人が古代文明の末裔であることなど、キャラクター設定に共通点が多いのです 。
設定に共通部分が多い理由は?
それもそのはず。実はこの2つの作品は同じ企画書が元になったと言われています。NHK公式サイトの「海の日」特集での『ふしぎの海のナディア』の作品紹介には、以下の記述があります 。
<実は作品の土台となったのは、1980年代初頭に宮崎駿がNHKの『未来少年コナン』の第二弾として構想した『海底世界一周』でした><しかしこの企画は実現せず、宮崎は後にそれをあの『天空の城ラピュタ』に転用しました><『ふしぎの海のナディア』の謎の青い石、超古代文明、ナディアが追われるシーンなどが『ラピュタ』に似ているのは、そうした経緯によるものだそうです>
「ナディア」のキャラクターデザインを担当した貞本義行さん。「元は宮崎駿さんの企画」と知らされていた
『 未来少年コナン』(1978年)に続いて、NHK総合で宮崎駿監督のアニメとして企画されていたとは ! ボツになったことが惜しまれます。この件に関して、スタジオジブリ側からの公式声明は見当たりません。しかし、『ふしぎの海のナディア』のスタッフ側の発言は残っています。その1人が、庵野さんと同じくガイナックス社に所属していて、「ナディア」のキャラクターデザインを務めた貞本義行さんです。当初、監督を兼任する予定でした。月刊「アニメスタイル」第2号の特集記事によると、NHK総合での放送に向けて1980年代に宮崎さんが関わったという企画書は「海底世界一周」(仮題)。ミノア海上帝国の末裔の少女セリカが持つ「ファイアーレンズ」の争奪戦を描くという内容でした。それを元に企画を練り直したグループ・タックのスタッフから「元は宮崎駿さんの企画」と貞本さんは告げられたそうです。前述の雑誌のインタビューで次のように話しています 。
<グループ・タックの方から「実はこれ、元は宮崎さんの企画なんですよ」と教えられたんです。宮崎さんが『ラピュタ』を作る前に参加した企画だったんです。宮崎さんが描いたイメージボードや企画書を見せてもらってですね>このとき、実際に宮崎さんが描いたイメージボード(アニメのシーンを絵にしたアイデアスケッチ)を見たそうです。貞本さんは、当時の感想をこう語っています。<見たんですよ。それを見て「ああー、なるほど」と「ラピュタ」に似ている理由に合点がいきました>貞本さんは宮崎さんのイメージボードを見たことで強烈に感化される一方で、「そこから離れなくちゃ」と宮崎さんのテイストを残さないように苦悩しました。キャラクターデザインは続けたものの、脚本をめぐってNHKのスタッフと意見がぶつかり、放映の半年前に降板。庵野監督が引き継ぐことになったそうです。共に名作として知られる『天空の城ラピュタ』と『ふしぎの海のナディア』。まさか源流が同じ企画だったとは意外な経緯ですね 。
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